20158月19日(水)

福島県郡山市 郡山女子大学

 

「伝承遊びを劇遊びに発展させた

子どもの想像力の育ち」

 

 

学校法人 真生学園 真生幼稚園

   発表者    青木 弥鈴

   協働研究者   副島満理子

          平岡亜弥子


想 像 と 愛                       園長 副島正幸        


 相手が今何を求めているか、何に苦しんでいるかを想像することが思いやりです。その思いやりが愛なのです。
本当の優しさとは、相手を理解し、相手の心情を思いやる想像力を持つことです。
     瀬戸内寂聴    

 私も想像力は、人生に必要不可欠なものだと思いますし、想像力のない人には優しさは生まれないような気がします。換言すれば、「想像できる能力」や「想像しようとする努力」が相まって、そこに優しさという花が咲くのではないでしょうか。瀬戸内寂聴さんの言われるように、優しさ、思いやり、愛などは想像力が生み出すものといえるかも知れません。

 幼児の保育において、先生たちはいつも子どもたちの想像力を培うように環境を構成したり、雰囲気を作ったり、かかわり方を工夫しているのですが、これは容易なことではなく、苦労することも多いのです。想像遊びの代表として、ままごとなど「ごっこ遊び」が挙げられますが、自由遊び中心の保育をしている真生幼稚園では、園児は1日の大半を想像的な活動にいそしんでいることになります。先生たちは、子どもたちが想像遊びに、心ゆくまで没頭できるように工夫をしているのです。

また、子どもの想像力を豊かにするには、経験が必要です。経験というのは体験と区別すると、「『体験』はたかが体験でしかなく、それによってその人自身が変わるというほどのことなどない。 しかし『経験』は、その人を変え、新しいその人を作っていく。それだけが真に「経験」と呼ばれるべきだ。」 (森有正) と言えます。単なる体験ではなく、人をいい方に変えるような経験が必要なのです。もちろん、体験の積み重ねが経験に昇華されていきますので、保育の中で、特に自然や社会と触れ合うような、〇〇体験を多くさせることは重要です。つまり経験は想像のための素材なのです。そして素材が多ければ多いほど想像が豊かになるのは言うまでもありません

考えてみると、想像をするのは自由な心の働きだと言えます。子どもは本当に自由になると、つまり心が解放されているとき、自分で考え、自分で感じ、工夫し、発見したりすることができるのです。子どもが主体的に活動しているとき、子どもは想像の喜びを感じるのではないでしょうか。子どもの「想像し、創造する能力」は「自由」の中で育ちます。子どものときに、自由がない状況で育つと、「想像し、創造する能力」、そして人間にとって最も重要な、愛や優しさは育たないのではないでしょうか



毎月発行の真生幼稚園の「園だより」の中の「園長のことば」より



『伝承遊びを劇あそびに発展させた子どもの想像力の育ち』



子ども達は園庭を中心にいろいろな友だちとかかわり合いながら、日々、
自由遊びを思い切り楽しんでいる。
保育者はこどもの遊びの様子を見ながら、子どもたちの選択が広がるような
援助や環境作り、その時期に経験してほしい遊びの紹介などをしながら保育を行っている。

 その中で、2014年9月以降に、伝承遊びから発展していった子どもたちの遊びや活動の様子、
その中での子どもたちの想像力や心の育ち、かかわる保育者の援助や気づき等について
考察していきます。


おじいちゃんおばあちゃん会 〜伝承遊びへの興味〜

 夏休み中に祖父母の家に遊びに行ったときに教えてもらった子もいたようで、
2学期が始まってから、竹馬やわらべ歌遊びなどを楽しむ姿がよく見られた。

9月の敬老の日にちなんで、祖父母を幼稚園に招いて一緒に遊ぶ
「おじいちゃんおばあちゃん会」を
計画していたので、何をするか子どもたちと話し合ったところ、伝承遊びを取り入れることとなった。

竹とんぼ、竹馬、折り紙などを、祖父母にやり方やコツを教えてもらいながら、一緒に遊ぶことで、
これまで自由遊びのときにあまり伝承遊びに興味を持っていなかった子どもも、楽しんでいました


生活発表会 導入 〜どんな劇ができるかな?

 12月の生活発表会に向けて、演目を子どもたちと話し合ったとき、
見立て遊びから劇遊びへと発展しつつある伝承遊びを演目の一つとして発表することになった。



それぞれの、伝承遊びを、いろんなものに見立てて(見立て遊び)、お話を組み立てていきます。 

   
  竹馬→馬  

 
T;竹馬は何にする?

C1;“うま”って名前に入ってるから、馬じゃない?

C2;外でも「ぱっかぱっか」って遊んでるから馬だよね。

T;そうだね。その馬にはだれか乗ってるの?

馬だけがやってくるの?

C2;お侍さんが乗ってる!

   
 おしくらまんじゅう→おまんじゅう  

T;「おしくらまんじゅうしたい」って言ってたけど、

誰と誰がおしくらまんじゅうするの?

C;いや、お侍さんがおまんじゅうを食べるんだよ。

T;あ、なるほどね。お侍さんが遊ぶんじゃなくて、

「おしくらまんじゅう」もおまんじゅうになって

出てくるんだね!

            
    

 お手玉→龍

C1;お手玉って何かあるかな?

C2;う〜ん…

T;お手玉の遊びってこんなのがあるよ。

  (お手玉を投げてキャッチしたり、本来のお手玉遊び

をして見せたりした)

  あと、歌を歌って遊ぶのも楽しいね。

(龍が出てくるお手玉歌を知らせたいと思い、

『♪でんでらりゅうば』を紹介した)

       
 皿回し→風

T;これは何に変身できそうかな〜?

C;……?

T;ちょっと難しいね。

(やって見せて)このお皿が回ってる動きとか、何か

閃いた人いる?

C1;めっちゃ回ってる! 風が吹いてるみたい。

T;ほんとだね。

C2;じゃあ、風にしよう!


                                              
 コマ回し→たつまき

T;さっきの皿回しは風だったけど、コマ回しは

なんだろう。

C1;これも回ってるね。

C2;さっきのより速いんじゃない? 台風みたい。

C3;いや、竜巻のほうがいいと思う!


   

けん玉→カエル

T;けん玉はどうしようか?

C1;剣?

C2;でも剣に丸いのついてないよ。

T;こんな風に遊ぶけど、どう?(やって見せる)

  球の動きとか、当たったときの音とか、どうかな?

C3;ぴょんぴょんしてる。

  C4;カエルじゃない?「カコ」って音も鳴き声みたい!

    

ストーリーは、園児たちと話し合いながら、できあがっていきました。 

 
 
生活発表会に向けて 〜劇遊びって楽しい!

 まずは、自分の好きな役割になって、自分たちで台詞や動きを考えながら進めていった。その中で、伝承遊びは難しいものもあるので、「この役をやりたいけどまだできない」という葛藤もあったようだ。自由遊びの時間に自分たちで挑戦してみる姿や、できるようになった友だちがアドバイスする姿が見られるようになった。
 
 保育者も、手作りのけん玉を一緒に作ったり、コマ回しのひもの長さを調節したりして、その子に応じてかかわった。異年齢での劇なので、役割が決定すると、年長児が中心となり、同じ役の友だちを引っ張っていった。また、希望だけでなく役の人数や学年、登場する回数などにも気づけるようにし、偏りがないように配慮した。

 けん玉については、成功したかどうかがわかりにくいので、どうするか子どもに問いかけたところ、成功したらカエルになりきって「ケロ」と鳴く、ということになった。

 

 

その後の子どもの姿

 生活発表会当日は、とても堂々とした姿を見せていた子どもたち。そんな子どもたちの姿にあこがれ他の演目に出ていた友だちも、発表会終了後、この劇あそびを「発表会ごっこ」として楽しんでいた。

冬休みが明けてからは、正月遊びとしてコマや凧なども新たに準備していたところ、喜んで取り組む子どもたちの姿が見られ、子どもたちは引き続き伝承遊びに興味を持っていたようだ。

 

 

保育者の課題・反省

伝承遊びから発展した劇遊びを生活発表会で発表するにあたって、かかわり方として、声かけが多かったので、もっと環境構成を工夫したい。また、子どもたちの豊かな想像力がさらに発揮されるよう、これからも子どもたちの気づきや思いなどを丁寧に汲み取っていきたい。

 

まとめ・考察

劇の結末について、子どもたちの間で議論があった。昔話には勧善懲悪の内容が多いが、お侍がまんじゅうをあげなかった理由を考えたり、「龍が理由も聞かずに怒ったことに対して反省するのもいいのではないか」という意見を出したりする姿が見られ、子どもたちの思いやりの気持ちや心の育ちを強く感じることができた。最終的に「仲直りをする」という結末にしたい、と話し合って決めており、今後も相手の気持ちを考える子どもの姿を大切にしていきたいと改めて感じた。

また、伝承遊びを教材として扱う場合、これまでは挑戦した結果やその過程を楽しむことが中心となっていたように思う。しかし、それだけではなく、見立て遊びにつなげることで、子どもが想像した世界を表現する楽しさが加わったことは、今後教材研究をしていくにあたって、新たな視点になったのではないかと思う。

劇遊びに伝承遊びを部分的に取り入れるのではなく、全体を通して取り入れることができたのは、ひとえに子どもの想像力(見立てる力)に拠るところが大きかったように思う。今後はさまざまなかかわり方を模索し、子どもの想像力や心を豊かに育てていきたい。